長い人生の中で、『香り』もしくは『匂い』に強い記憶があるのは18歳の夏のことでした。生まれ育った人口2万弱の半農半漁の町中は干物の加工場がたくさんあり、一種独特の臭いがありました。それは私にとっては青春期の爽涼の世界にはそぐわないものでした。
晴れて進学という、町を出る大義名分を得て都会に居を移した最初の夏、帰省したプラットホームに足を降ろすなり一番に飛び込んできたのは『潮の香り』でした。思わず胸いっぱいに吸い込んだ『潮の香り』は爽やかでした。
潮の香りに夏を感じ、沈丁花に春の到来を想うこのささやかな幸せを記録にし、喧噪の中で日々忙しくされている方々の一服の休息のよすがとなってくれればと思います。